漏洩説の発端となった研究

 漏洩説の発端となったのは、2015年12月に『Nature Medicine』に掲載された論文に書かれた内容である。ノースカロライナ大学のラルフ・バリック教授を中心とする研究グループは、コウモリのあいだで感染が広がっているコロナウイルスが、どのように変化すれば、人間に感染するようになるのかを調べていた。その過程で、コウモリから検出されたコロナウイルスとSARSコロナウイルスを組み合わせたキメラウイルスが作り出されていた。その研究グループには、武漢ウイルス研究所に在籍する石正麗氏も参加している。

 また、石氏は、2014年から2020年にかけて、米・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)から、多額の研究資金を受給している。NIAIDと直接契約を結んでいたのは、ニューヨークに拠点を構えるEcoHealth Allianceである。その研究パートナーとして、武漢ウイルス研究所は、総額370万ドルの研究費のうち約60万ドルを受け取っていた。研究の目的は、コウモリのコロナウイルスが、人間に感染するようになるリスクについての調査である。その研究計画には、新しいコロナウイルスの人工合成と、それを用いた動物実験も含まれていた。

 EcoHealth Allianceは、武漢ウイルス研究所には、あくまでサンプリング採取のサポートと実験室の使用を依頼していただけだと述べている。しかし、2017年に武漢ウイルス研究所のグループが発表した論文では、コウモリから検出した異なるコロナウイルスを組み合わせて、新しいウイルスを合成していたことが示されている。

 その論文に書かれている研究のどの部分に、どれほどのNIAIDの研究資金が使われていたのかは不明だが、武漢ウイルス研究所で、新しいキメラウイルスが合成されていたことと、それに関連する研究にNIAIDの予算が使われたことは確かである。

The origin of COVID: Did people or nature open Pandora’s box at Wuhan?

Bulletin of the Atomic Scientists, May 5, 2021

https://thebulletin.org/2021/05/the-origin-of-covid-did-people-or-nature-open-pandoras-box-at-wuhan/

A SARS-like cluster of circulating bat coronaviruses shows potential for human emergence

naturemedicine, November 9, 2015

https://www.nature.com/articles/nm.3985

Why many scientists say it’s unlikely that SARS-CoV-2 originated from a “lab leak”
Science, September 2, 2021
https://www.science.org/content/article/why-many-scientists-say-unlikely-sars-cov-2-originated-lab-leak